フレンズJAPANブログ

杉下智彦先生へのインタビュー2021.06.15

アクセスいただきありがとうございます。

東京女子医科大学の小松恵です。

早いものでもう6月、2021年も半分が過ぎようとしています。例年なら夏休みの旅行など計画している時期ですが、コロナの影響でもう少しおうち時間が続きそうですね。

 

さて、今回は大学1年生だった私に赤尾さん(フレンズJAPAN代表)との出会いを下さった恩師、杉下智彦先生にインタビューをさせていただきました。

 

 杉下先生は1990年に東北大学医学部を卒業され、聖路加国際病院にて外科レジデント、チーフレジデントを経て、東北大学心臓外科医局にて心臓移植の研究を行われました。そして1995年から約3年間、マラウイ共和国にて青年海外協力隊に参加され、その後フレンズが設立したシェムリアップのアンコール小児病院に2000年6月から勤務されました。ここで赤尾さんやアメリカ、ヨーロッパなど世界各地から集まったスタッフと出会われ、濃密な時間を過ごされて、帰国後も連絡を取り合う仲になられたそうです。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院(国際保健)、ロンドン大学大学院(医療人類学)にも留学されています。2016年10月より東京女子医科大学、国際環境・熱帯医学講座教授/講座主任に就任され、臨床、研究、教育と幅広くご活躍されている先生です。いつもエネルギッシュな杉下先生とお話しているとあっという間に時間が過ぎてしまうのですが、今回のインタビューも学び満載の内容でした。その中で、特に私の心に響いたものをいくつか読者の皆様に共有させていただければと思います。

 

大学生時代の杉下先生は今と変わらず、行動力と思考力に溢れていたことがインタビューを通して伺えました。先生の進路に大きな影響を与えたことが2つあります。1つ目は「1億人の飢餓を救う」というスローガンの下、「アフリカ難民救済」を目的として、1985年7月13日に行われた、20世紀最大のチャリティーコンサートであるライヴエイド(LIVE AID)を見たこと。2つ目は、ホスピスやターミナルケアなどといった今でこそよく聞くようになった、しかし当時はまだ考えが浸透していなかった“死の臨床”死生学について興味を持ったことだそうです。もともと高校生の時にテレビで観たエチオピア飢饉がきっかけで、医師として国際貢献したいと思っていた先生の中で、アフリカと死生学が結びつきました。アフリカに実際に足を運んで、文化、社会、歴史を学び、現地で医療活動を行いたいというモチべーションはここから生まれたそうです。高校生の時から一貫して国際貢献をしたいと思い続け、それを行動に移すことができる強さ、またバンドメンバーとライブエイドを見て感銘を受けたり、死生学についての勉強会を開催し、ホスピスについてのドキュメンタリーを撮影したりなど、様々な角度からアプローチするしなやかさに大変驚かされました。

 

アフリカでの臨床についても、大変興味深いお話をお聞きすることができました。特に印象的だったのは、日本とアフリカの一番大きな差は住民たちの病気への理解の違いであるということです。例えば、マラリアの患者が病院にやってきたとして、日本であれば検査を行い、診断をし、適切な薬を処方して治療します。しかし、アフリカではなぜマラリアに罹ったのか、その原因を治療して欲しいと頼まれるそうです。アフリカには、伝統医療を行う伝統医がいます。伝統医は病気に罹ったのは呪い、祟り、あるいは先祖の行いが悪かったせいだと説明して患者さんの疑問に答えてくれるため、患者さんは安心するそうです。杉下先生は週末には伝統医のもとに赴き、彼らのコスモロジー(世界観)をより深く理解しようとされたそうです。日本人にとって想像できない呪いや祟りの世界観に理解を示しつつ、科学的に有益だと思われる治療法を提案していくことは真の“対話”であると感じました。一言に国際貢献といってもただ人手や物資の足りない地域でがむしゃらに働くのではなく、住民を含め国家全体に基礎的な知識を伝え、医療システムや社会システムを根本から見直すことができないと持続可能な自立にはつながらないと思います。1999年、フレンズが運営・開院した、カンボジアのシェムリアップに開院したアンコール小児病院も2013年に念願だった現地化(自立)を果たし、現在は「カンボジア人のカンボジア人によるカンボジア人のための病院」として、現地スタッフが主体となって運営しています。

 

最後に、杉下先生から私達たちに力強いアドバイスをいただきました。新型コロナウイルスの影響で直接誰かに会って話を聞いたり、日本を飛び出し自分の目で世界を見に行ったりすることはなかなか厳しい状況ですが、インターネットや書籍を通して、creativityを高めることはできます。新型コロナウイルスに対するロックダウンよりも閉鎖的な状況の一つに難民キャンプが挙げられますが、ケニアやスーダンの難民キャンプではインターネットや移動図書館などを駆使し、勉強したりスキルを身に付けたりする試みが行われています。どんなに過酷な状況でも社会課題への強い関心を持ち続ければcreativityを高めることができる良い例です。新型コロナウイルスが鎮静化した暁には、言葉や映像だけでは感じることができない五感を使った“魂と魂の交流”ができるよう、今はじっくり自分もcreativityを見直す期間だと感じました。私もコロナ禍でできなくなったことを嘆くばかりでなく、今何ができるか常に考え進んでいきたいと強く思いました。

最後になりましたが、お忙しい中、インタビューさせていただいた杉下先生に感謝申し上げます。

 

さて、4月から学生ブログを担当させていただきましたが、今回の6月号をもって新しい学生にバトンタッチすることになります。今後もブログを担当する学生たちとミーテイングを行い、より深く、より多くの面から「世界を知る」ことができるようこの活動に携わっていければと思います。ブログの記事を書くにあたり、たくさんの方にご協力いただき、新たな出会いのおかげで私も少し成長させていただけた気がします。つたない文章ではありましたが、読者の皆様の心に少しでも響くものがあれば嬉しいです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

どこかでまた読者の皆様にお会いできることを楽しみにしています。

 

2021年6月
小松 恵

 

 

インタビューにご協力いただいた杉下智彦先生

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