課題
ミャンマーにおける栄養教育の様子
“母親の育児に必要な栄養・衛生知識が乏しい”
ミャンマーは2011年の民政移管以降、急速な経済発展を続けていますが、最大都市ヤンゴンの南側を流れるヤンゴン川で隔てられた地域は、都市への主な移動手段として船を利用するため、経済発展が遅れています。農村部は舗装されていない道も多く、雨季になると車両の通行は難しくなり、医療施設や学校へのアクセスの妨げになっています。医師、特に
小児科医は不足しており、母親の多くは子供に必要な栄養に対する知識が乏しく、子供たちの発育状況を把握できていません。
ミャンマーでは困っている人を助けたり、寄付をしたりする習慣が根付いており、村で意欲的なボランティアが多い一方で健康や衛生問題を改善させるための十分な知識や資金がありません。
ミャンマーの現状ユニセフ「世界子供白書2019年」より
※新生児及び5歳未満児死亡率は、出生数1,000人あたりの死亡数
※妊産婦死亡率は、出生10万人あたりの死亡数で、当該時期に妊娠関連の原因により死亡した事例が対象。
プロジェクト概要
ミャンマー国内で活動するローカルNGO「ゴールドミャンマー」と協力し、2013年から2015年に最大都市ヤンゴンの南東にあるチャウタン郡6村、2015年から2017年にダラ郡6村を対象とした、モバイルクリニック、栄養・衛生教育、村の母親たちを対象としたトレーナー研修等を実施。
モバイルクリニックにより、母親たちが子供の健康状態を把握できるようになり、研修を受けた「お母さんトレーナー」が各村に広まったことで、村全体の知識の底上げに繋がりました。
モバイルクリニック・健康診断
ミャンマー人で構成された約10人の医療チームが年間約12回各村を訪問し、年平均600人の子供たちにモバイルクリニックや健康診断を実施。栄養失調や上気道炎、皮膚疾患等が多く見受けられ、病院に行かずに放置されているケースも見つかったため、必要に応じて健康指導も行いました。
母親・子供たちへの栄養教育
ミャンマー人の専門家を招いて、村人たちに対する健康衛生教育を実施。テーマは「公衆衛生」「HIV/AIDS」「デング熱」「サナダムシ」等多岐にわたり、毎回100人以上が参加しました。また同時に子供たちを対象とした栄養教室も実施。ゴールドミャンマーのスタッフがゲーム方式で指導する等、子供たちが楽しく学べる工夫を行いました。
トレーナー研修(ToT)
各村から指導者となる母親たち10~20人を選び、トレーナー研修を実施。基本的な栄養素、栄養のある食事、衛生、新生児ケア等について学びました。研修では栄養や衛生の知識だけではなく、人前での話し方やポスターを使った説明方法についても指導を受けました。研修を終えたら、村の「お母さんトレーナー」の誕生です。
村の指導者による講習会
トレーナー研修を受けた「お母さんトレーナー」が、子供を持つ母親たちや村人10人前後を自宅や公民館に招き、1~2時間の講習会を実施。参加者は熱心にトレーナーの話を聞き、多くの質問も飛び交いました。普段から栄養や衛生に関することを話題にするようになり、村全体の知識の底上げに繋がったことが、この講習会最大の効果です。
クッキング・デモンストレーション
家庭で栄養のある食事を意識して作ってもらえるよう、母親たちを対象に、健康的でおいしい料理の作り方を教えるクッキング・デモンストレーションを各村で実施。お粥や煮込み料理を村の母親たちと楽しく作りながら、ミャンマーでよく使われている化学調味料や油の使用を控える指導も行いました。
ミャンマー地図
ミャンマー連邦共和国 概要
人口 | 5141万人(2014年9月 ミャンマー入国管理・人口省発表) |
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首都 | ネーピードー |
面積 | 68万平方キロメートル(日本の約1.8倍) |
公用語 | ミャンマー語 |
民族 | ビルマ族(約70%)、その他多くの少数民族 |
宗教 | 仏教(90%)、キリスト教、イスラム教等 |
季節 | 暑季(3月~5月)、雨季(6月~10月)、乾季(11月~2月) |
アクセス | 日本から最大都市ヤンゴンまでの直行便で約8時間 |
産業 | 農業、天然ガス、製造業 |
GDP(名目) | 約714億米ドル(2018/19年度IMF推計) |
一人当たりGDP | 1,321米ドル(2018/19年度IMF推計) |
在留邦人数 | 3,063人(2019年10月現在) |
在日ミャンマー人数 | 24,471人(2018年6月時点、外国人登録者数) |
出典 :
外務省ホームページ
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/myanmar/data.html#section1
外務省ホームページを加工して作成(世界の医療事情>ミャンマー>4衛生・医療事情一般)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/asia/myanmar.html